「指物」の歴史
指物の始まりはいつ?どんな歴史をたどってきた?
指物は日本の伝統工芸品として長らく人々に親しまれてきました。指物が他の工芸品に比べて特徴的なのは釘を使わず、木と木を組み合わせてできている、というところです。こうした技法は例えばお寺の建築などと似たようなところがあり、日本に昔から伝わってきたものだとわかるのですが、ではそもそもこの指物はいつから作られるようになったのでしょうか。
現在わかっているところではこの指物が初めて日本に登場したのは奈良時代とされています。しかしながらオリジナルは日本人が作ったものではなく中国人が作ったものでした。日本には船に乗って大陸へと渡り、中国の文明や教養を学ぶ制度がありましたが、遣唐使と呼ばれる人々は向こうから様々な珍しいものを持ち帰り、それを日本人に伝えることで文化レベルの向上を図っていました。その中に唐の木と呼ばれる木と木を組み合わせて出来た、今日の指物の原型となる工芸品があったのです。
こうした工芸品は時代が下って平安や鎌倉でも作られていましたが、指物を専門で作る指物師が現れるようになったのは室町時代からです。それまで指物は大工と呼ばれる建築全般を取り仕切る人が作っていましたが、需要の上昇に合わせて指物だけを作る人が必要となり、指物師という名前が生まれるようになったのです。
なぜ「指物」が人気になったのか
ではどうして需要が増えるようになったかというと、別のコラムでも触れている通り、室町時代に発達するようになった茶の湯の影響が大きかったからでした。お茶を淹れる際には様々な用具を箱に入れる必要があり、風流な箱といえば指物だったのです。
指物が本格的に民衆に行きわたるようになったのは江戸時代になってからです。江戸幕府は全国から指物師を集め江戸で指物を作ってもらうようになります。その結果現在の日本橋には多くの職人町ができて、そこでは多くの指物が作られていくようになります。
江戸時代中ごろに差し掛かると人々の暮らしが豊かになり、いくらか贅沢することができるようになったため、指物を手元に置く人が増えてきました。それまでの指物は派手なものが多かったのですが、江戸時代になると素材の良さを生かすために渋いデザインが好まれるようになります。現在でもこの指物は人々に愛され、歴史のあるものとして扱われています。
1997年には経済産業省によって伝統的工芸品の指定を受けたほか、日本人のみならず海外の人からもそのデザインの独特さに注目が集まるなど、より一層の発展が見込まれる工芸品となっています。